下記記事にて、「1○に貴賤なし」全体の問題傾向を説明しましたが、その中で特にみなさんが「残念」と思われる問題傾向について、3回についてご説明します。
今回は「ベタ崩し」と言われる、非常に誤答率が高い問題についてです。
「1○に貴賤なし」では、こうしたベタ崩しの問題を毎回数問程度意図的に入れています。意図的に誤答率が高い問題を意図的に入れることに対し、反発も多いと思いますので、ここでご説明します。
出題問題数
基本的に、出題数は500問に対して、5~10問程度だと思います。なお、積極的に採用してこの問題数です。
なぜなら、問題の公準の制約が強く、基本的にベタ崩しのような誤答率の高い問題の作成が困難だからです。逆に言えば、公準があるからこそ、ゲームバランスを崩さず、ある程度高い正解率を確保しているとも言えます。
ベタ崩しのパターン
先に書いた通り、ベタ崩し=誤答率が高い問題と考えていただいて構いません。
このベタ崩しのパターンは以下の通りです。
- 前フリに複数の分岐があるが、後フリが今まで出題されたことがない(もしくは出題頻度が極端に少ない)もの
- 前フリを聞いたときに解答者が抱くイメージと、実際の正解が違うもの
- 前フリの情報が少ない(意図的に減らし、限定出来ないようにしている)ため、ほかの分岐に落とす余地があるもの。
- 過去の事実が変化したもの、もしくは新たな概念が出てきたもの
例題
それぞれのパターンで例題を出します。
①のパターン
Q:他の選手とは違う色のユニフォームを着なければいけないと規定されている、サッカーにおいて守護神と呼ばれるポジションは何でしょう?
A:ゴールキーパー
誤答可能性高いものをあえて勝負の急所に配置したということで、AQLの出題で物議を醸した問題です。
個人的には「リベロ」と決めつけるのはどうかと思っています。別のユニフォームを着なければいけない競技はいろいろ存在するので、こういう出題も可能性として考えないと行けないと思います。
ただ、過去の傾向やポジションの認知度などから、ほとんどリベロに落ちるパターンだと思います。前フリで押して「リベロ」と答えるのがセオリーだと思います。
②のパターン
Q:江戸時代の装飾画の流派である「琳派」の祖である、『風神雷神図』などの作品を残した江戸時代の画家は誰でしょう?
A:俵屋宗達
僕も、出題するまでは知らなかったのですが、尾形光琳は「琳派」の大成者であって、祖ではないということです。
この事実を知っていれば誤答しないですが、琳派=尾形光琳というイメージがあると引っかかってしまう問題です。
③のパターン
Q:現在の内閣総理大臣の安倍晋三の祖父である、1942年の翼賛選挙において無所属の立場ながら衆議院議員選挙に当選し、東條英機らの軍閥主義を鋭く批判した政治家は誰でしょう?
A:安倍寬
「安倍晋三の祖父」という言葉だけでは回答をひとつに絞りきれません。母方の祖父である岸信介だけではないのです。それに気づけば、翼賛選挙まで聞いて、見極めが出来る問題と思います。
本来なら「母方の祖父」という言い方で、一意になるよう解答を限定するようにしておくべきと言われています。しかし、僕は上記の問題の通り、あえて解答を一つに絞り込ませないよう、情報を減らすこともします。
④のパターン
Q:ボクシングで棄権の意思表示をするためセコンドが行う、タオルをレフェリーに向けてグルグルと回す動作のことを何というでしょう?
A:ウェイビング
今までは「タオルを投げ入れる」という解答が正解でした。しかし、海外では世界的にタオル投入のルールが廃止される傾向にあるようです。それを受けて日本でも2019年にこのルールを採用する方針をを示しています。
「タオルを投げ入れる」ということが一般的にならなくなったという事実があったことが面白いと思い、今回採用しました。
ベタ崩しを採用する理由
最後に、ベタ崩しを採用する理由を説明します。
一つは、「何が出るかわからない」という不安感を解答者に与えるということです。その不安感を与えることで、解答者のメンタル、判断力など、さまざまな力量を引き出したい狙いがあります。
もう一つは、ベタ問が「クイズ界という狭い世界で培われた常識」を根拠にした思い込み、決めつけにより形成されている部分があるということです。
もちろんすべてのベタ問がそうであるとは思いません。しかし、解答者の根拠のない決めつけや「正解してほしい」という出題者の誤答への忌避感もあいまって、本来であれば確定しないポイントでも、さも「確定ポイント」であるかのように扱われているものもかなりあるように思います。
最後に誤解をしてほしくない点を一つあげておきます。
僕は、「競技クイズが強い人間」を引っ掛ける意図はありません。これをやってしまうと、ゲームバランスが崩れます。したがって、こうしたベタ崩しに対し、適切に対応出来ない人はあまり評価したくないというのが本音です。
この件に関しては賛否両論あると思います。ただ、こちらは批判覚悟で出題していることをご理解いただければと思います。